電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第268回

(株)MUJIN PR&HRマネージャー 山内龍王氏


物流施設向けの需要が大幅増
中国EC大手にも納入

2018/4/13

(株)MUJIN PR&HRマネージャー 山内龍王氏
 (株)MUJIN(東京都墨田区業平1-1-9、Tel.03-4577-7638)の勢いが加速している。同社のロボットコントローラー(RC)を搭載した産業用ロボットは、自らピッキング動作を自動生成・実行する知能ロボットとなり、ティーチング作業なしでばら積みされたワークや超多品種のピッキングなどを実現。その技術を求め、国内外の様々な製造・物流企業が同社の門戸を叩いており、現在、ロボットベンチャーの中で最注目の企業だ。今回、PR&HRマネージャーの山内龍王氏に話を伺った。

―― 直近の需要は。
 山内 今期(2018年5月期)は、自動車や電機・電子工場向けを中心にFA関連も好調に推移しているが、それを上回る勢いで物流施設向けの需要が大きく伸長している。また、17年末に開催された「2017国際ロボット展」や1月の「第2回ロボデックス」への出展を通じて引き合いがさらに増えており、今期は前期に比べ約2倍の事業成長を見込んでいる。

―― そのうち物流施設向けについて。
 山内 インターネット通販市場の拡大を受けて物流施設の需要が高まっているが、一方で人手不足や生産年齢人口の減少といった問題が浮上しており、そのギャップを埋めるためにロボットを活用したいというニーズが高まっている。そのなかで当社は、従来は不可能と言われていたロボットによる超多品種ピッキング工程の自動化を実現。これにより、国内はもとより海外からも引き合いがあり、直近では中国・上海市で稼働中の中国EC(電子商取引)大手「JD.com」の大型物流施設で、当社のロボットソリューション(18台)が活用されている。

―― 開発面では。
デバンニングなどソリューションも拡大
デバンニングなどソリューションも拡大
 山内 先に述べた超多品種のピースピッキング以外にも、デバンニング(貨物をコンテナやトラックから取り出す作業)、デパレタイジング、パレタイジング、包装機への投入などソリューションを拡大しており、物流施設向けの自動化を一気通貫で対応できる体制を整えている。そのほか、物流施設向け以外では「ティーチワーカー」に関する開発も強化している。

―― そのティーチワーカーについて詳しく。
 山内 これは内製・外販用に多軸ロボットを新規に作りたいメーカーに対して、基本のRC自体を開発ならびにOEM供給するもので、つまりは顧客がロボットのハードウエアを設計・製造し、ティーチワーカーを搭載したRCを組み合わせることで、新たな産業用ロボットが開発できる。一般的に新たなロボット制御システムを構築するには2~10年といった期間を要するが、ティーチワーカーなどを活用することで、動作をさせるだけであれば数週間~1カ月程度で対応できる。引き合いも非常に強く、当社がさらなる事業成長を遂げていくためのカギとなる技術だと考えている。

―― RCに搭載する電子デバイスについて。
 山内 当社のRCはティーチングでなくリアルタイムシステムなので演算量が多く、搭載するチップには高い性能が必要となる。そして今後、高度なソリューションが増えるにつれ、チップ側にもより高い処理能力が求められることになる。ただ、その際に熱対策が課題となる。加えて、当社のRCは粉塵などを防ぐためにファンレスの設計を施しており、そういった面からもチップには高度な放熱性能が必要となるため、もしその面で改善につながる新しい製品などがあればぜひご提案いただきたい。

―― 強化されている取り組みは。
 山内 ロボット業界の大きな課題としてシステムインテグレーター(SIer)の不足が挙げられている。なかでも、当社が注力する物流関連はロボットの本格的な活用が始まったばかりの分野であるため、対応できるSIerはまだ少ない。逆に言えばロボット業界とあまり接点がなかった企業にもビジネスチャンスがあり、当社でもSIer育成には力を入れている。また人員面でもエンジニア、営業、マーケティングなど幅広い人材を拡充していく必要があり、当社の事業をともに取り組んでもらえるような方やパートナー企業は常に募っている。

―― 今後の方向性を。
 山内 生産年齢人口の減少が見込まれる社会環境において、産業用ロボットのニーズはますます高まっていくだろう。ただ、現状ではその活用範囲はまだまだ限定的であり、当社が手がける物流施設向けなど新しい分野でロボットが活用できるということをしっかりと周知していき、さらなるシェア拡大を図っていきたい。そのためにも製品をより汎用性が高く使い勝手の良いものにしていくとともに、引き合いが増えている海外市場への対応として中国や米国での事業所設置なども検討していく。来期(19年5月期)は今期の3~4倍の成長を達成できるよう、これまで以上にスピード感をもって事業展開を進めていきたい。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2018年4月12日号11面 掲載)

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