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有機EL投資にブレーキ


~FPD設備投資

2018/3/23

シニアディレクター チャールズ・アニス氏
シニアディレクター チャールズ・アニス氏
 スマートフォン(スマホ)用有機ELディスプレーの増産投資に陰りが見え始めた。トップメーカーのサムスンディスプレー(SDC)が2018年の増産計画を凍結・延期したことが明らかになり、この影響が他のパネルメーカーにも波及しないか危惧されている。国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「IHSディスプレイ産業フォーラム」で「FPD製造技術&設備投資動向」を担当するシニアディレクターのチャールズ・アニス氏に現状や今後の見通しを聞いた。


 ―― SDCがフレキシブル有機ELの増産投資にブレーキをかけています。
 アニス アップルのiPhone X向けに昨年末までフル稼働を続けていたが、今年に入り稼働率が大きく落ちた。「X」の販売が思うほど伸びていないようだ。フレキシブル有機ELが当初の想定ほど売れない場合は投資計画をスローダウンすれば済むと思っていたが、現状では、18年末に装置搬入が予定されていた新工場「A5」への投資を凍結し、再開の時期も見えていない。また、液晶工場を転換して整備した「A4」も装置こそ導入したものの、まだ立ち上げておらず、本格稼働は早くても6~7月ではないかとみられている。

 ―― 一方で、BOEは重慶に有機EL新工場を建設すると発表しました。
 アニス BOEに限らず、すでに投資が決定している案件は計画どおりに立ち上げが進むだろう。SDCの稼働率もiPhone18年モデル向けに下期には上がってくるとみている。
 しかし、これから装置を発注しようと考えていた19年以降の案件は計画を見直すかもしれない。SDCの利益率が大きく落ちれば、中国メーカーの中にはSDCへの追随を見合わせるところが出てくるだろう。IHSの有機EL需要予測は少し保守的だといわれていたが、19年以降の計画については、さらに慎重に予測する必要が出てきた。

 ―― フレキシブル有機ELが高価なことも需要低迷に関係しているのでは。
 アニス 確かにそのとおりだが、追加投資を実施するのなら安易に価格を下げられない。特に18年は、SDC以外のパネルメーカーはフレキシブル有機ELの量産歩留まりが上がっていないため、値下げ要求には応じにくい。

 ―― SDC以外のパネルメーカーで量産が進めば、価格の低下や需要の増加が期待できます。
 アニス だが、SDC以外のパネルメーカーの量産出荷は今のところ順調でない。中国メーカーは投資こそするが、十分に稼働しておらず、フレキシブル有機ELはまだ量産出荷できていない。SDCに続いてアップルに供給するとみられているLGディスプレー(LGD)もどこまで供給量を増やせるのか、まだ不確定だ。

 ―― フォルダブル端末を商品化して、端末1台あたりのパネル面積を大きくする可能性は。
 アニス フォルダブルの成功が将来のフレキシブル有機EL需要を押し上げるのは間違いないが、18年に商品が登場するかは分からない。まだ試作パネルすら公開されていないし、現時点で「X」を超えるきわめて高価な端末になることが明白だからだ。

 ―― FPD全体の設備投資は引き続き旺盛ですね。
 アニス BOEが武漢に新工場の建設計画を発表したように、10.5G液晶工場への投資計画は引き続き新規案件が出ており、IHSも需要予測を変更していない。テレビ用パネルは、旧ラインの閉鎖などで需給バランスを調整しやすいことも、投資計画を立てやすい要因になっている。

 ―― ただし、18年下期以降は供給過剰に陥る可能性も指摘されています。
 アニス さらに新たな建設計画が具体化するようだと、深刻な供給過剰に陥る可能性が高い。スマホ用でもテレビ用でも、中国の政府や地方自治体が補助金を拠出しすぎていることに問題がある。一方で、補助金の過度な拠出を規制しようという動きも出始めており、これがパネルメーカーの資金調達を今後難しくする可能性もあるため、パネル各社の投資計画を今後も注視していく必要がある。

(聞き手・編集長 津村明宏)

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