電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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部材市場「面積需要も数量も増える」


~「第34回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(3)~

2018/1/12

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、1月25日、26日にFPD市場総合セミナー「第34回IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で開催する。本稿では、国内最大の受講者数を誇る同フォーラムの内容について、講演アナリストに4回にわたりインタビューする。第3回は「FPD部材市場」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に主要テーマを伺った。

 ―― 2018年の部材市場の注目点は。
 宇野 まず中国市場だ。中国では多くの企業が様々な部材に投資したがっているが、現状では日系あるいは韓国系メーカーの技術支援無くして事業化・量産化が難しい。日韓メーカーは「技術支援しなくても、いつかは現地で事業化されてしまう」と割り切り、補助金を確保しながら、ガラス基板や偏光板などで現地企業との合弁事業を立ち上げつつある。
 もう1つは、面積ベースでの需要拡大だ。10.5G液晶工場の稼働で65インチの量産拡大が見込まれることなどから、平均画面サイズは引き続き拡大し、数量も増える。当社では、18年のガラス需要は面積ベースで7%拡大すると予測しており、7~9月期にはガラスのタイト感がより一層強まるとみている。

 ―― ガラス基板市場について。
 宇野 先述のとおり、日米のメジャー3社と中国企業が合弁で事業を拡大している。イリコや東旭といった中国企業は5/6G用を量産しているが、いずれもカラーフィルター用にしか採用実績がなく、8G以上は日米3社が変わらぬ強さを維持している。イリコはコーニング、東旭は日本電気硝子とそれぞれ後加工を手がけているが、日米企業にとっては、中国企業の商流を活用することで従来取引がなかった中国FPDメーカーへの販路を開拓できるという利点がある。

 ―― 偏光板市場では企業の淘汰が進まず収益が厳しい状況が続いています。
 宇野 確かにそのとおりだが、価格は下げ止まった。加えて、錦江集団が19年までに8本の製造ラインを立ち上げるという積極策を展開している。台湾の奇美材料(CMMT)が中国に立ち上げた工場に資本参加しているほか、中国の同業である盛波光電(SAPO)の株式の4割を取得するなど、既存ラインの買収を積極化している。日東電工とも技術提携した。住友化学と東旭の合弁事業が順調に立ち上がるかも注目点だ。

 ―― 有機EL用の円偏光板については。
 宇野 日本メーカーが独占しており、韓国メーカーもまだ量産できていない。ただし、スマートフォンの中小型パネル用に限られるため絶対的な面積需要が小さく、利益は高いが売り上げは少ない。

 ―― やはり部材は面積商売が基本ですね。そのほか注目すべき部材は。
 宇野 液晶パネル用部材のイノベーションに注目している。液晶は、まだバックライト光の10%程度しか取り出せておらず、透過率を向上できる余地が大きい。その意味で量子ドット(QD)ガラスに注目しており、18年は積極的な販売プロモーションが展開されそうだ。既存のQDフィルムに対してバリアフィルムを1枚少なくできるというメリットがあるため、新技術を訴求してテレビを拡販したいメーカーに受け入れてもらいやすいとみている。
 また、ミニLED/マイクロLEDバックライトにも注目している。中国メーカーが採用にかなり前向きだ。LEDチップの価格が大きく下がったことが背景にあるが、ローカルディミング技術を組み合わせれば液晶パネルのコントラストやダイナミックレンジをさらに向上することができる。75インチではテレビ1台に7万チップ使うといわれており、商品化に向けてLEDコントローラーICなどの周辺部材にもインパクトを与えるだろう。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第34回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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