商業施設新聞
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第93回

東信水産(株) 代表取締役社長 織茂信尋氏


新業態の高級飲食店を展開
外国人採用など新機軸も

2017/8/29

東信水産(株) 代表取締役社長 織茂信尋氏
 首都圏の百貨店や食品スーパーなどで鮮魚専門店を展開している東信水産(株)(東京都杉並区上荻1-15-2、Tel.03-3391-2226)は、豊洲オフィスの新設、荻窪本社の移転、外国人社員の採用など様々な取り組みを進めており、2017年3月には新業態のシーフードバー「Toshin Sea Foods Style」をオープンした。同社の状況、最近の新しい取り組みなどについて、17年1月に新しく代表取締役社長に就任した織茂信尋氏に話を聞いた。

―― 既存店の動向から。
 織茂 当社は現在関東首都圏で31店を出店しており、出店施設は百貨店を中心に、食品スーパーなど多岐にわたる。全体の売り上げとしては横ばいだが、個々の店舗では出店する施設の集客力に比例する形の業績となっている。近年では魚に対する意識の高い層を主に対象とした試みとして、14年に荻窪総本店に新設した「Toshin Kitchen」や、3月に伊勢丹新宿店地下1階にオープンしたシーフードバー「Toshin Sea Foods Style」などを展開している。

―― Toshin Sea Foods Styleについて。
 織茂 ヨーロッパを中心にシーフードバーを展開する「キャビアハウス&プルニエ(CHP)」と協業し展開している。日本の旬の魚と、CHPのキャビアやシャンパンなどを用いた、ラグジュアリー性の高い料理が特徴だ。18年1月期での売り上げ目標は3670万円で、開業以降既存客からの評判は良く、新しい客層も開拓できている。

―― 他に新しい取り組みとしては。
 織茂 店舗で使っている、フィッシュオーダーシステムを用いてICT化を進めた。オーダーシステムをネットワーク化する試みは10年前にもあったが、その時はPCを用いたシステムだったため、当社が要求する衛生水準をクリアすることが難しく、導入することができなかった。しかし衛生的に利用できるiPadが普及したため、改めて導入することができた。オーダーシステムのICT化によって、これまで個人で管理していた発注に関するデータをシステムで共有でき、引き継ぎ作業を簡略化した。またシステムも店舗ごとにカスタマイズできるため、仕事の効率も上がっている。

―― 外国人の採用にも積極的です。
 織茂 今後少子化などで人口が減少していくにあたって、外国人の方々が社会に占める割合が増えていくと考えている。我々はこれに備えて、管理業務にも外国人を雇用していく必要があると判断しており、すでに総合職として1人外国人を採用した。外国人の方々に受け入れられる魚料理というイメージは、外国人ならではの視点が要求されることが多く、そういった点で活躍していってほしいと思っている。

―― 今後の出店エリアや業態については。
 織茂 まず出店エリアでは、首都圏内の電鉄沿線地帯を対象に考えている。そういった中で、食に注力している施設を中心に出店していきたい。業態については色々考えており、今回のシーフードバーのような新しい形態もあり得る。

―― 貴社の今後について。
 織茂 当社は今後、3つの点に力を入れていきたいと考えている。1つ目と2つ目は先に挙げた、東京での沿線地帯という立地での出店と、人口減少社会における外国人の活用だ。そして3つ目は、水産資源調達スキームの多様化である。現在水産業界では漁獲量の減少が大きな問題となっており、良質な食材をいかに確保するかが重要だ。そのため我々は、香川県産の「オリーブハマチ」や、大西洋のマグロなど、海外も含めた多様な調達スキームの構築を進めている。こうした新しい取り組みを進めつつ、これまで脈々と受け継いできた伝統を大事にし、常に変化している市場、消費者の動向に対応していきたい。

(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2203号(2017年7月25日)(5面)

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