電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第235回

東芝デバイス&ストレージ(株) 代表取締役社長 福地浩志氏


パワーMOSなどフル稼働
提携・JVで売上高1兆円

2017/8/18

東芝デバイス&ストレージ(株) 代表取締役社長 福地浩志氏
 東芝デバイス&ストレージ(株)(東京都港区芝浦1-1-1、Tel.03-3457-3369)は、東芝電子デバイスグループのディスクリート、システムLSI、ストレージ(HDD)事業に注力する新会社として7月1日に発足した。年間売上高が8000億円、連結従業員は1万9000人に及ぶ国内でも有数の総合デバイス企業だ。取扱品目のなかにはトップシェアの製品も数多く、絶縁スイッチの機能を持つフォトカプラをはじめ、電源用パワーデバイス、車載用の画像処理IC「Visconti」など圧倒的な技術力と高品質で顧客からの信頼も厚い。初代社長に就任した福地浩志氏に新会社のミッションや事業計画を聞いた。

―― 新会社の事業カバーエリアは。
 福地 旧東芝ストレージ&デバイスソリューション社から、主力のNAND型フラッシュメモリーやSSD製品を統轄する会社として、4月1日付で東芝メモリが独立した。新会社は従来のディスクリートならびにシステムLSI、それからHDDを中心とする製品群が大黒柱となる。

―― 主力製品の足元の動きは。
 福地 ディスクリート製品だが、昨年後半からパワーMOSFETやフォトカプラなどが忙しくなっている。民生から車載・産業機器向けなど、ほぼ全領域で好調が続く。一部中国スマートフォン向けで小信号デバイスが弱含んでいるようだが、業績に悪影響を与えるほどではない。

―― パワーデバイスの増産を実施中ですね。
 福地 前工程は加賀東芝エレクトロニクスの8インチラインの増産対応を進めている。年末までに現状よりも1割ほど増強する。17年度以降も旺盛な受注が継続するようであれば、さらに引き上げ、クリーンルームを早期に満杯まで持っていきたい。
 後工程は、社内は主に姫路半導体工場を中心に増強中だ。早ければ今秋にも増産対応を敷く。基本的には多品種少量生産で、付加価値のつくものや差異化できるようなパッケージ製品は国内に残す。汎用品は海外OSATで拡大していく。

―― HDD製品もシェアを拡大しているようですね。
 福地 16年からパソコンやゲーム機向けなどで2.5インチサイズを中心として、急激にシェアを拡大した。さらに、エンタープライズならびにサーバー用途向けにニアラインの高テラバイト(TB)クラスの大容量製品が伸長し、ストレージ部門だけで年間4600億円を売り上げた。10TB品を投入済みで、年末までに14TB品のサンプル出荷を準備中だ。これまでは技術的なハードルもあったが、課題の解決にめどをつけた。コスト競争力をさらに確保するため、拠点のフィリピン工場で高TBの新製品向けの製造ラインを中心に能力増強の検討を開始する。

―― 生産ならびに開発拠点を教えて下さい。
 福地 ディスクリート製品は、前工程が加賀東芝エレクトロニクスとSiCなどのチップ生産も手がける姫路半導体工場、それからミックスドシグナルIC、ロジック、ユニークなリニアイメージセンサーなどを生産するジャパンセミコンダクター(岩手・大分事業所)がある。
 後工程ではパワーデバイスなどの拠点となっている姫路半導体工場、カプラ・小信号デバイスの豊前東芝エレクトロニクス、ならびにタイ工場を擁している。ストレージはフィリピン工場が量産拠点。また、システムLSIの研究開発は半導体研究開発センター(川崎市)が引き続き統括していく。

―― 新会社のミッションは。
 福地 システム提案力を強化していく。すでに他社はやっているが、当社ではこれだけの製品を揃えておりながら、必ずしもうまく機能しているとは思えない。
 システムLSIやディスクリート製品の組み合わせで車載の顧客などに売り込んでいけるように、システム対応力をしっかりとつけていく。いわゆるソリューション売りが新会社の重要な事業モデルと考えている。プロジェクトチームを設けて検討に入っている。

―― 17年度の事業展望ならびに中期的な経営目標は。
 福地 足元は、一部のロジック製品などが少し落ち着いてきているものの、総じて全製品で好調な受注を維持している。17年末まではある程度、事業見通しが立っている。ストレージは16年度に大きく飛躍した分、17年度は売価も下がるだろう。このため17年度の事業計画は少し慎重にみており、前年度比で微増を目指す。投資は年間200億円を見込んでいる。
 中期的には売上高1兆円を念頭に入れているが、事業計画として決めたわけではない。この間、車載・産業など民生以外の顧客を開拓する。さらにはディスクリートとシステムLSIの海外売上比率も拡大する必要がある。まずは中国大陸含めて大票田を攻める。東芝の販売ルートだけでは足りないので、ディストリビューターなどと提携・協力を拡大中だ。ストレージでは米西海岸、車載向けでは欧州市場を積極的に開拓する。3年後には海外が売上高の6割となるよう目指したい。
 ゆくゆくは他社との技術提携やJVなどを積極的に推進して、1兆円の売り上げを達成したいと思っている。

―― 改めて、新社長としての抱負をお聞かせ下さい。
 福地 基本的に新会社は、今ある強い技術力をコアに、それをブラッシュアップする。また、社員のなかには、NANDフラッシュが無くなり今後の事業運営において不安に思っているスタッフも大勢いることだろう。事業を軌道に乗せ、安定して成長することで、一刻も早く社員の不安を払拭したい。さらにはCSR(企業の社会的責任)や風通しの良い組織、正しい経営を当たり前に実行し、すべてのステークホルダーに貢献していく会社にしていきたい。

(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2017年8月17日号1面 掲載)

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