電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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FPD部材、偏光板や駆動ICに注目


~「第33回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(2)~

2017/6/16

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月27~28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに6回にわたって聞く。第2回は「FPD部材市場」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に主要テーマを伺った。

 ―― FPD市場の活況が続いています。
 宇野 FPDの需要面積自体が増えており、面積商売の側面が強い部材の需要も伸長している。2018年には中国で10.5G液晶工場が立ち上がる予定で、テレビの大型化がさらに進むが、中国や米国市場では65インチにサイズアップしても売れるだろう。

 ―― そのなかでも偏光板市場が厳しいと聞きます。
 宇野 参入メーカーの淘汰が進まないため競争が激しく、各社の収益環境が改善していない。価格もここ2年で2割下がった。年初から一部で値上げの動きがあったが、価格下落の歯止めにはなったものの、成功していない。中国メーカーが立ち上がってきており、淘汰が始まりつつあるという状況だ。

 ―― 偏光板は日東電工や住友化学が強いですね。コーティングPVA技術については。
 宇野 コーティングPVAは大きなイノベーションだ。ただ現在はスマートフォン向けにほぼ限定されており、本格的にテレビ用で展開するためには工程の簡略化が今後のカギになる。コーティングPVAに取り組む背景の1つに、ポバール樹脂の価格がなかなか下がらないことがある。偏光板メーカーのなかでも日東電工は必要な材料をかなり内製しており、これが将来、競合他社と大きな差を生むとみている。

 ―― 中国の偏光板メーカーの動きは。
 宇野 錦江集団が19年までに8本の製造ラインを立ち上げるという積極策を展開している。台湾の奇美材料(CMMT)が中国に立ち上げた工場に資本参加しているほか、中国の同業である盛波光電(SAPO)の株式の4割を取得するなど、買収によって事業拡大を進めている。

 ―― 量子ドットテレビの増加に伴う影響は。
 宇野 量子ドットをカラーフィルター(CF)に用いたタイプが18年にも登場する可能性がある。このタイプは俗に「インセル偏光板」と呼ばれ、量子ドットによる散乱光の影響を回避するため、偏光板とCFを上下逆に配置するかたちになり、パネルメーカーがワイヤーグリッド偏光板を内製することになる。ただし、まだ技術的なハードルが高く、歩留まりや品質の確保が難しい。

 ―― ドライバーICへの注目度も高いですね。
 宇野 パネルの生産枚数が需要に直結するため、需要面積が影響する他の部材と条件が異なる。平均サイズの大型化で生産枚数自体は減少傾向にあり、1本のソースラインで2色の信号を送るDRD(Double Rate Driving)の普及もIC需要を押し下げる要因になっている。

 ―― DRDやTRD(Triple Rate Driving)の普及状況は。
 宇野 DRDはIPS系を中心に普及しており、LGディスプレーの採用率は90%にのぼる。BOEなど中国勢も今後採用を本格化する。DRDはVA系とは相性がよくないうえ、サムスンがテレビ用ラインを閉鎖したため市場全体でIPS比率が上がっており、今後ますますDRDの採用が広がるだろう。
 一方、TRDは現在のところ32インチHDにしか採用されていない。大画面には採用が難しいといわれており、以前よりトーンダウンしている。

 ―― 中小型パネルではTDDI(Touch and Display Driver Integration)が普及していますね。
 宇野 17年のTDDI搭載台数は2億台以上になるとみて、従来予測を上方修正した。もともと米シナプティクスが実用化した技術で、台湾ファブレスなどからコンパチ品も出ているが、シナプティクスのシェアは落ちていない。ゼロキャパシタンスなどのディスクリート機能をICに盛り込む提案がシェア維持につながっているようだ。

 ―― 有機EL用ドライバーICは。
 宇野 サムスンが独走している感がある。従来はファブレスに一部製造を委託していたが、現在はすべて内製に切り替えた。SoCからドライバーに送っていた信号を省くスケーラー技術などを実用化して省エネ化を実現しており、この次は有機ELでTDDIの実用化を狙ってくる。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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