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第238回

「会社は大きくしない!」が一番のソリューション


~明光電子の十川正明氏が語る言葉は、奥が深くて襞があるのだ~

2017/6/16

 「会社というものは、売り上げや人員の規模を追うのではない。最大のポイントは利益であり、当社は20%以上の粗利益を常に達成している。みんなにいっぱいボーナスを出せる会社であればやる気も出てくるわけであり、一発当ててやろうというチャンレンジスピリッツもみなぎるのだ」

明光電子 代表取締役 十川正明氏
明光電子 代表取締役 十川正明氏
 にこにこと笑いながら、しかして眼光は鋭くこう語るのは明光電子の代表取締役の十川(そがわ)正明氏である。同社は技術商社のフロンティアランナーとして知られており、マイコン、FPGA、メモリー、LED、ディスクリート、さらには電源、コンデンサーなどの一般電子部品も幅広く扱っている。本拠地は新横浜にあるが、もともとの設立は30年以上前のことで、福岡で起業したのだ。

 「私は広島の府中町で生まれたが、原爆が落ちた爆心地から2kmのところであった。バリバリの被爆2世であるが、運が強いのか、いまだにカラダは超健康である。広島修道高校を出て同志社大学で機械工学を学んだ」(十川代表)

 卒業したころは景気が良かった。現在ではコベルコとなっている油谷重工に入社するが、すぐに姫路営業所の所長となってしまった。しかし2カ月後、オイルショックに直撃され景気が悪くなる。3年間をそこで過ごし、その後大阪の商社に1年勤めたのちに福岡に移り、明光電子を設立することになるのだ。

 「最初の顧客は九州電力や三菱重工長崎などであった。便利屋に徹し、専門商社としてセットに近いところから業界に入っていった。結果的にはお客様の悩みを解決するというソリューションビジネスの基礎がこの頃から作られていたのだ」(十川代表)

 現状にあって明光電子の取り扱う品目は数多い。ほとんどあらゆる品目を扱っているといってもいいが、重要なことはセットメーカーが何かを構想している段階から入り込んでいく、というビジネスモデルを貫いている点だ。つまりは、顧客とともに新しいものを作り上げるという技術商社であるからして、事実上競合は存在しない。オリジナルでかつカスタマイズに優れるエンジニアが数多い。また営業を担当する人たちもめっぽう技術に強い。

 ちなみに十川代表は『社訓「会社を大きくしない」』という書籍(ダイヤモンド社刊)を執筆し、2015年10月に一般書店向けに売り出した。どのような企業にあっても会社は大きくしたいと思うのが常であるが、この逆説ともいえる論法を書いたそのわけを十川代表に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

 「当社の年商は約63億円であるが、来年は70億円を突破するだろう。しかして売り上げのパイは重要ではない。20%以上の粗利益を出して社員に還元することが最大のミッションだと自分は思っている。現場には安売りするな、もっと高く売れ、と発破をかけている」

 このサプライズともいうべき十川代表の言葉は、実のところ仕事は金額ではなく面白いかどうか、というところに尽きるだろう。仕事が半分以上遊びであれば、こんなに楽しいことはない。時間を忘れてのめり込んでしまえば、画期的な製品開発にもつながり、それが利益を生み、自分たちにも還元される。

 最近ではドローンでサルを追っかけまわす仕掛け、水の中を通りコンクリートさえ抜けていく無線技術、IoTエンジン、アナログ信号をデジタルに変換するスマートアナログなどまさに超オリジナル、オンリーワンの製品開発で多くの人を驚かせている。若者たちが面白がる仕事を探してやるのが自分の使命だと、十川代表の限りない挑戦はまだまだ続いているのだ。

 面白がりながら事業を起こし、優良カンパニーを作っていった十川正明氏の語る言葉はまさに奥が深くて襞があるのだ。取材が終わって別れ際につぶやいた同氏の言葉もまたふるっており、次のようなものだ。

 「IoT時代を迎えて、ますますチャンスが拡がってきた。センサーに強い日本の出番が来たと真に思っている。しかして、まじめ面して取り組むのではなく、こんなものを作ったらみんなはびっくりして腰を抜かすだろう、という思いのほうが大切。若者たちはたきつければやる!! 若者たちが動かないのは、たきつけ方を知らない経営者たちが悪い」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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