電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第199回

用途広がる車載ディスプレー


~2020年には平均で1台あたり2枚搭載へ~

2017/5/26

カルソニックカンセイの「Human-Maxコックピット」
カルソニックカンセイの
「Human-Maxコックピット」
 日本では、普通乗用車にカーナビゲーションシステムがほぼ標準搭載されている。クラスター部でも、スピードメーターや燃料計などの一部表示系、もしくはクラスター全体をディスプレーとする動きもあり、もはや車載ディスプレーは、クルマに当たり前の搭載デバイスと言える。実際、大手ティア1の開発担当者からは、「ディスプレーの場合、自動車メーカーからデザインや仕様の変更を要求されても、ソフトウエアを変更するだけで比較的容易に対応することができる。また、画面の切り替えで多くの機能を持たせることができる点は大きなメリットだ。メカニカルスイッチの良さもあるが、今後はディスプレーへの置き換えが加速していくと見ている」との声が聞こえる。

「ミラーレス・カー」が成長のカギ

 2016年の車載ディスプレー市場は、前年比12%増の1億3600万枚と2桁成長を記録した。17年も同11%増の1億5000万枚と大きく成長していくものと期待されている。市場の内訳を見ると、CID(センター・インフォメーション・ディスプレー)が6割、クラスター向けが4割弱、残りがHUD(ヘッドアップディスプレー)やリアモニターなどとなっている。

 今後も各アプリケーションで堅調な成長が見込まれており、20年には1億7500万台規模にまで拡大していくものと予測される。同年の自動車市場がおおよそ1億台に上ると見られることから、平均で1台あたり2枚のディスプレーが搭載される計算になる。

旭化成のコンセプトカー「AKXY」 助手席には大型ディスプレーを搭載
旭化成のコンセプトカー「AKXY」
助手席には大型ディスプレーを搭載
 なお、16年6月17日には、今後の車載ディスプレーの成長を大きく左右する「電子ミラー」の搭載が解禁された。自動車の周辺視認に対する法改正がグローバルで実施されたことを受け、日本でも国土交通省(自動車局)が道路運送車両の保安基準を改正し、国内基準として採用すると発表。これにより、バックミラー・サイドミラーの代わりに「カメラモニタリングシステム」(CMS)を使用することができ、自動車メーカーは“ミラーレス・カー”の設計・製造が可能となった。

 加えて、18年からは、米国においてKT法(車両後退時の歩行者巻き込み事故を防止するためのバックモニターカメラの搭載を義務づける法規)が完全施行される。これらの結果、クルマにおける周辺認識システムならびに車載ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が大きく革新することになる。

車載ディスプレーも大きく進化

 近未来の自動車は、自動運転の進化により、より安全・快適な移動の提供が可能となる。車内デザインも変化し、車内の居住空間も大きく広がっていく。これに伴い、クルマに搭載されるディスプレーはより大型化していく傾向にある。表示する情報量も増加しており、低消費電力化も不可欠な要素だ。また、デザイン性の向上には、異形やナローベゼル(狭額縁)、曲面への対応、一層の高解像度化や視認性の向上など、ニーズは多様化・高度化している。

 大手ディスプレーメーカーであるシャープは、IGZO技術と画素内にゲートドライバーを配置する同社独自の構造・技術の組み合わせにより、狭額縁・異形デザイン(3辺フリー)を実現した「FFD(Free Form Display)」を製品化している。19年ごろからは、円形・異形・狭額縁(4辺フリー)品やカーブドディスプレー、大型異形ディスプレーなども市場投入していく計画だ。また、同社の液晶技術を活かした「ミラーディスプレー」も今後の用途拡大が期待される。従来のハーフミラー方式とは異なり、明るさを犠牲にしない独自方式を採用。ミラーモード時のクリアな反射・安全性を確保するとともに、ディスプレーモード時の不要な反射と輝度低減を解決している。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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