商業施設新聞
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No.607

進化する物流施設


今村 香里

2017/5/23

 物流業界では、人手不足が深刻化している。特にドライバー不足は数年前から問題となっていた。だが、今春ヤマト運輸の労働組合が会社側に行った労働環境の改善に向けた要求は記憶に新しく、物流業界に問題提起したといえるだろう。

 ネットが普及する中、自宅マンションの道路脇に停車しているトラックをよく目にするようになった。私自身もネット通販を利用する。即日配達など、さらに便利になっているので使う機会も増えたと思う。旅行や出張先で資料や荷物が増えてしまった時なども、コンビニで簡単に手続きができるようになったので重宝している。

 しかし、日中は仕事に出て不在であるため、再配達や夜間配達もしばしば利用する。こうした便利な配達の仕組みがドライバーの負担を増やしているとは意識していなかったが、今後は物流労働者のこともよく考えて利用したい。ちなみに、ヤマト運輸は、荷物の取り扱い量を見直す方針だという。

 そんな私の父親も運送会社に勤めていたが、最近、長年携わってきた運送業を定年前にもかかわらず突然辞めた。毎日異なる配送時間に合わせて深夜に出発するなど、不規則な生活をしているのは知っていたが、歳をとっても続けるには、やはり過酷な労働環境なのだ。前述のヤマト運輸のニュースが、物流業界全体の労働環境の改善につながることを期待したい。

 一方で、物流施設の形も変わろうとしている。ロボットなどの機械化が進む中で、省人化したオペレーションは必須となっている。

「ロジポート堺」の2階は“無柱空間”が特徴
「ロジポート堺」の2階は“無柱空間”が特徴
 4月に、ラサール不動産投資顧問ら3者で開発を進めていたマルチテナント型物流施設「ロジポート堺」(堺市西区築港新町)が完成したので、内覧会に参加した。機械効率、省人化に対応した最新の物流施設というので、興味津々で出向いた。

 省人化に対応し、ラサールの中嶋CEOが「あえて2階建てにした」という物流施設は、上下の移動にも配慮し1、2階を同一空間として利用できる。有効天井高は両階ともに6.5m以上(2階は約7mの天井もある)と高く、1階の床荷重は2t/m²(2階は従来の1.5t/m²)で、重貨物の保管にも配慮した特別仕様となっている。

 また、各区画に荷物用EVか垂直搬送機のどちらかを必ず配置(2区画で両方配置)することで併用使いでき、上下階の移動による作業ロスを排除している。コンセント設備も機械化に対応し、充実させたという。
 注目は2階の柱を無くした“無柱空間”で、全体の見通しが良く、貨物の在庫管理や作業員のコントロールなど、スムーズなオぺレーションが可能である。天井高も高いため、例えば、ロボットストレージシステムの《オートストア》の導入も可能だそうだ。入居したテナントがロボットやオぺレーションなど自由なアイデアを引き出せるようになっている点に魅力を感じる。

 「共同配送の提案やシェア型経済に対応する、汎用性のある物流施設が必要だ」と中嶋CEOが語るように、社会のインフラ機能として、物流を支える仕組みづくりが急務だろう。そのために、施設を提供する側、配送を行う企業など物流業界の人達は、様々な工夫と努力をして、このネット社会に立ち向かっている。サービスを利用する私たち消費者の意識改革も必要だ。
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