商業施設新聞
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No.605

猫との日常


永松 茂和

2017/5/9

 “少年”“おトラ”“大トラ”“プリンセス”“猫村さん”“シロ”“ミケ”……。

 何となく察しがつくと思うが、我が家の庭に遊びに来る猫たちの名前である。少年は、白みがかったグレーの体色にすらりと伸びた手足を持つ好青年。おトラは、名前のとおり茶色の虎柄。それよりひとまわり大きな体を持つのが大トラ。ふわふわの長毛におっとりした気品を漂わせているのはプリンセス。漫画の主人公であるスーパー家政婦猫にそっくりな猫村さんなどなど。また、性格も十人十色ならぬ十猫十色だ。少年は、我関せずのジェントルマンでよそよそしいところがあり、猫村さんは、甘えん坊の熟女のようで、道を歩いているとまるで犬のように飛びかかってくる。おトラは、気の弱い青年のようで遠慮がちなところがあり、車のボンネットに入り込んで鳴いている子猫の面倒を見るなど心優しい一面もある。大トラは、人懐っこい気の良い性格であるが、体が大きいせいかボス的な存在に見える。また、プリンセスは仕草がスローモーションで、雨にもかかわらず死んだように横たわっているおっとりとした変わった性格の猫である。

気持ち良さそうに眠る猫たち
気持ち良さそうに眠る猫たち
 どの猫も我が家の手入れを怠った伸びっぱなしの芝生がお気に入りのようで、朝早くから居心地の良い場所を求め、争奪戦を繰り広げているのを出勤前に窓から眺めるのが日課となっている。

 実は、彼らは飼い猫ではなく、俗にいうノラ猫だ。通りがかりの人たちが餌をやっているようで、皆毛並みがつやつやとして、人間を恐れない。一定の距離を保ちながら、我が家の庭でマイペースに過ごしているようだ。猫にとってはよほど居心地が良いのか、数百m離れた家の飼い猫が一時迷い込み、いったんは飼い主に引き取られたものの、また家出して戻ってきたこともあるほどだ。

 それほど深くかかわっているわけでもないのに猫の存在を意識するのは不思議なもので、知らぬ間に家族の一員になってしまったようであり、動物写真家の岩合光昭さんとまではいかないが、猫好きであるのかもしれない。よく犬と猫のどちらが好きかと質問されるが、どちらも好きで比べるのは難しい。百貨店の催しで、犬展、猫展など行われているが、なぜか犬展に比べると猫展の方に人が多数集まるという。なぜなら犬好きは、自分の飼い犬が一番かわいいという意識が強く、あまり他の犬には関心を示さないが、猫は皆で見る対象であるために人気があるらしい。

 ところで我が家の庭の猫は、居心地の良い場所が限られるため、訪れる猫が定期的に変わる。どうやら猫の間にも力関係やコミュニティがあるようで、その場を追い出されるなど気の毒な場面に出くわすこともある。毎朝、通勤時に気持ちよさそうに寝ている猫の姿を見るとなぜかホッとする気にさせられ、いつも気ままでうらやましいと見ていたが、今では、今日も一日がんばってほしいという気持ちにさせられる。ペットブームが訪れて久しいが、このような猫との何気ないかかわり方もありなのかなと感じている。
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