商業施設新聞
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No.601

コト消費とサブカルチャー


山田 高裕

2017/4/4

 「モノ消費」から「コト消費」へ―――。消費者の嗜好が物品を購入することから、自らの「体験」を重視するものへシフトしている、という話がそこかしこで叫ばれている。「爆買い」終焉に始まるインバウンド客の趣向シフトが最たるものだが、この傾向は国内の一般消費者についても指摘されており、各商業施設はこの現象を前に施設づくりやテナント集めに四苦八苦していると言われている。そしてこのような状況で、注目を集めているものがある。それは、マンガやゲームといった日本のサブカルチャーコンテンツだ。

 3月15日、東京の日本橋三越本店にて一つのコラボレーションイベントが開催された。ゲーム音楽専門のオーケストラを行うGAME SYMPHONY JAPANと三越がコラボした、「GSJ PREMIUM WEEK」だ。このイベントは人気ゲーム「P5(ペルソナ5)」をテーマにしたもので、本館7階の「はじまりのカフェ」では同作品とのコラボカフェ・物販が、本館6階の三越劇場では同作品のオーケストラコンサートが行われた。

「P5」にちなんだ展示物が並ぶ店内。物販の列も見える
「P5」にちなんだ展示物が並ぶ店内。
物販の列も見える
 三越の担当者によれば、こういったゲームやマンガとのコラボイベントを日本橋三越のような百貨店で行うのは今回が初めてとのことだった。それ故に実際上手くいくのかと危ぶまれた面もあったようだが、蓋を開けてみればこれが大盛況。三越劇場で3回行われたコンサートは全てチケットが完売、延べ1500人の観客が訪れた。コラボカフェの方も好調で、物販ではイベント期間の7日間で1200円のマスキングテープが1000個、1800円のマグカップが550個売れるなど上々な成績を見せた。今回の成功を受け、三越は今後も同様のイベントを企画していく方向のようだ。

 実際の売り上げという面でも効果を上げたが、より注目されるのはイベントによる新たな客層の発掘だ。三越によると20~30代の若い層を中心に、祖父母が孫を連れて訪れるなど男女・年齢問わず幅広い来客があったとのことだが、その多くが日常的にはあまり百貨店を利用しない層だったという。三越の担当者は今回のイベントの効果について「普段百貨店に足を運ばない人々にも百貨店に来てもらい、イベントを楽しんでもらうとともに百貨店自体も楽しんでもらえれば」と語っていたが、新たな客層の開拓という目的は果たされたと言っていいだろう。

 だが同時に、開拓した新たな客層をどれだけ繋ぎとめることができるか、という課題ものしかかる。ここで求められるのはサブカルチャーを単なる客集めのカンフル剤とするのではなく、要素として継続的に組み込んだ店舗・施設づくりに繋げていくことである。それができれば、サブカルチャーは各施設を悩ませる「コト消費」対応における一つの答えとなることだろう。
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