電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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中小型パネル「有機EL、車載に次ぐ柱に期待」


~「第32回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(1)~

2016/12/16

シニアディレクター 早瀬宏氏
シニアディレクター 早瀬宏氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、2017年1月25~26日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第32回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに全3回にわたって聞く。第1回は「中小型FPD&アプリケーション市場」を担当するシニアディレクターの早瀬宏氏に話を伺った。

 ―― 中小型パネル市場ではやはり有機ELへの注目度が高いですね。
 早瀬 17年はスマートフォン(スマホ)用ディスプレーの世代交代、つまり液晶から有機ELにシフトする可能性が高く、これが最大の焦点になる。当社では、16年のスマホ用パネルのうち有機ELの構成比は2割程度と見ているが、17年はもっと比率が上がる。
 ただし、現時点では、まだどれほどシフトするのか、そして、その効果としてユーザーにどれだけアピールできるのかは不透明だ。ここが業界各社の技術の磨きどころになるのだが、仮にこの壁を乗り越えることができなければ、このまま有機ELに資金を投じ続けていいのかと、誰もが疑い始めるだろう。

 ―― サムスンディスプレー(SDC)以外に量産できるメーカーがいません。
 早瀬 現時点ではSDCと競合メーカーに技術格差がありすぎる。SDCは引き続き有機ELの供給能力を上げており、それに伴って出荷も売り上げも増えるだろうが、競合するスマホ各社にSDCが有機ELを一社供給するという関係性は多くのジレンマを抱えることになる。

 ―― フォルダブルやベンダブルの有機ELは17年中に登場するでしょうか。
 早瀬 技術的なハードルがきわめて高いと考えている。頻繁にタッチ操作する画面をどう保護するのか、現時点では技術的に難しいとしか言えない。実際にそうしたパネル、それを搭載したスマホが登場しなければ判断できない。

 ―― 中小型では車載パネル市場が伸び盛りです。
 早瀬 17年も間違いなく堅実に伸びる。自動運転を最終目標にした電子制御が追加されるたび、ディスプレーの搭載数が増え、用途も広がる。ナビ系は市場がかなり成熟してきたが、クラスターの電子ディスプレー化はこれからが本番。特に18~19年には電子ミラーの搭載が本格化するとみており、普及のスピードによっては想定を上回る需要につながるかもしれない。

 ―― 車載用は引き続きアモルファスシリコン(a-Si)が主役ですか。
 早瀬 電気自動車をはじめとするエコカーの増加に伴い、バッテリー消費を抑制する必要があるため、より省エネな低温ポリシリコン(LTPS)への切り替えが始まる。a-Siは世界的に旧世代のライン閉鎖が相次いでいるため、供給能力の面からもLTPSシフトが強まるだろう。

 ―― 中小型FPDで有機EL、車載に次ぐテーマは。
 早瀬 次のアプリケーションをどう見つけるかが課題だ。スマートウオッチやVR(仮想現実)ヘッドセットなどが出てきているが、前者はある程度浸透して曲がり角に来ており、後者はまだこれからの市場で、いずれもディスプレー市場に与える影響が小さい。
 一方で、IoTとつながるディスプレーとは何かというテーマは興味深い。例えば、ライフログを管理できるスマートバンドや医療関連、スマート家電、スマートメーター向けにパッシブ有機ELの需要が伸びており、パネルメーカーはフル生産の状況にある。今後はホームセキュリティーやスマートカード、ディスプレーダグといった用途も伸びそうで、長期的に有機ELと車載に次ぐ第3の柱になる可能性がある。
 こうしたIoT用途は、従来のプロダクトアウト的な発想ではなく、セットメーカーとの協業による差別化から生まれてくると思っている。ディスプレー自体は決して高性能・高画素である必要はなく、シンプルかつ省エネが求められるケースも多い。センシング機能の組み込みなど、ディスプレー自体が機能を持つという発想がより重要になってくるのではないか。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第32回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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