電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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拡大するオートモーティブ・センサー市場


~続・自動車産業に舵を切る半導体メーカーたち~

2016/11/4

■成長続ける自動車市場

 自動車へのエレクトロニクス導入のスピードは加速の一途を辿っている。そのスピード感は、業界で調査を行う私たちにも十分に感じ取れる熱気を帯びている。こうした熱気や現場からのインプットによって、IHSでもさらに需要予測を引き上げる必要に駆られている。
 
 IHSでは、自動車向け半導体市場は年平均成長率(CAGR)2015~20年で5.8%の成長を予想している。16年には324億ドルであった市場は、20年には400億ドルを超えると見ている。

 将来の自動車にイノベーションを起こすのが(1)ADAS、(2)Infotainment:Connectivity & Telematics、(3)パワートレインの3大電子技術であるとIHSでは予想しており、同時に自動車用半導体市場も著しい成長をもたらすと期待を寄せている。

 特にADAS分野の成長は著しく、同分野はCAGR15~20年で20%超えの驚異的な成長ペースを維持するとIHSでは見ている。ADASで最も重要なデバイスの1つがカメラ/イメージセンサーである。

 IHSでは、世界の自動車販売台数は20年に1億台を超えると予想しているが、自動車向けカメラ出荷台数も20年には1億個を超えると予想している。


 IHSでは、業界からの多くのフィードバックによって自動車向けカメラ出荷の予測を引き上げ、これによって自動車へのカメラ投入率が携帯電話/スマートフォンの実績をも凌駕するスピードになるという結論に至った。自動車には安全や制御、情報収集に至る様々な用途のカメラが搭載され、将来は携帯電話に次ぐマーケットに成長するとIHSでは見ている。

 そして、自動車メーカーがADASの先に見据えるのは自動運転技術である。

■車載カメラが普及期に突入

 IHSでは、16年現在の車載カメラは5190万台の市場規模と見ている。

 車載カメラは世界的に本格的な普及期に入っており、視界補助(リアビュー)カメラと画像認識(ADAS)カメラの双方で期待されている。

 画像認識(ADAS)カメラの普及に関しては高額な価格がネックとなり、視界補助(リアビュー)に比べてスピードは緩やかだが、ハイエンドとミッドレンジクラスでは搭載が始まった。
 
 しかし、双方を合わせた車載カメラモジュールは、22年には1億4000万台(CAGR16~22年=18・1%)市場に成長するだろう。また、将来は自動車の安全や制御、情報収集に至る様々な期待がカメラの搭載に拍車をかけ、携帯電話に次ぐマーケットに成長するとIHSでは見ている。

 この市場成長ペースは過去に起こった携帯電話へのカメラの普及ペースと比較しても、決して弱いものではない。車載カメラ投入率(車体台数とカメラ台数の単純比較)の中期予測では17年に60%、20年には100%に達すると見られる。このペースで普及が進むと21年には携帯電話のカメラ普及率を超えるだろう。

 当初、車載カメラモジュールは日本メーカーが中心となって開発を進めてきた。それは画像認識(ADAS)カメラではなく、視界補助(リアビュー)カメラが中心であった。一方、画像認識(ADAS)カメラについては法整備が進んでいる欧州メーカーが中心となって開発を進め、業界をリードしていることを認識すべきである。

 画像認識(ADAS)カメラでは、ヴァレオ、コンチネンタル、ボッシュなどが中国、台湾、韓国のレンズメーカーとの協力関係を結んで製品を手がけるサプライチェーンを構築している。とりわけ中国浙江省寧波に本社を持つサニーオプティカル(Sunny Optical)は前記メーカーのほかデルファイ、マグナ、TRW、モービルアイなどほとんどのティア1へレンズを供給しており、サプライチェーンの中でも注目株だ。

■拡大するオートモーティブ・センサー市場

 カメラとブレーキによる自動衝突防止機能からスタートしたADASには、自動運転へのさらなる変革が求められている。L4以上の完全自動化には様々な課題があり、その道程の険しさは想像に難くない。少なくとも今後10年は、ドライバーアシストとしての機能強化を軸に製品開発や実績の積み重ね、データの構築が求められるだろう。センサーの中心である車載カメラにしても「低照度対応」「低ノイズ化」「光利用効率拡大」の3分野でさらなる技術の進化が求められていく。それでも、完全な自動運転を目指すとなると、Radar、超音波ソナー、LiDARなどのキーデバイスが必要となるだろう。

 これらのオートモーティブ・センサー市場は16年現在、Radarが1250万台、LiDARは180万台、赤外線カメラは20万台の市場規模とIHSでは見ている。


 そして22年には、Radarは4910万台(CAGR16~22年=25.6%)、LiDARは490万台(同17.8%)、赤外線カメラは60万台(同17.0%)に達するとIHSでは予想している。レーザーやミリ波を使用したシステム開発は欧米が先駆けてきたが、現在は日系メーカーも急追しており、今後の展開に注目が集まる。




IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、お問い合わせは(E-Mail : KunSoo.Lee@ihsmarkit.com)まで。
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