ペンシルベニア州政府地域振興・経済開発局 日本投資事務所主催、日本貿易振興機構（ジェトロ）共催による「米国・ペンシルベニア州投資セミナー」が6月1日に東京都内で開催された。冒頭、ペンシルベニア州政府地域振興・経済開発局 国際事業開発室のデビッド・ブリール室長が日本語で挨拶し、「ペンシルベニアにおいてどのような機会があるか、どのようなサポートがあるかを説明したくて来日した。ペンシルベニア州政府一同皆様と再びお会いできる機会を心からお待ちしています」と語った。

　セミナーでは、まずジェトロ海外調査部米州課 課長代理の伊藤美佐子氏が「米国先端技術の動向とビジネスチャンス」のテーマで講演した。

　続いてペンシルベニア州政府 地域振興・経済開発局 上席副長官のニール・ウィーバー氏が「ペンシルベニア州の経済環境」のテーマで講演した。ペンシルベニア州は米国北東部に所在。フィラデルフィアとピッツバーグが2大都市となっている。GDPは6840億ドルで、ペンシルベニアが国だとすると世界で21位に相当する。人口は1200万人超でさらに増加している。大学も多くあり、エンジニアリング、ライフサイエンスなどの分野に向けて優秀な人材が輩出されている。進出企業は様々なプログラムにより資金を得られるとしており、地域振興・経済開発局は、助成金、貸付金、設備投資補助など様々なインセンティブを用意している。

　引き続き、デビッド・ブリール室長が「ペンシルベニア州のビジネス環境の強み」のテーマで講演。ペンシルベニア州は、ライフサイエンスの分野では、2009～13年に6512の特許を取得、7万8294人の雇用を創出しており、研究開発への支出は20億ドル。国立予防衛生研究所（NIH）の資金提供は4位となっている。

　アグリビジネスの分野では、ペンシルベニアの人口だけでなく、米国の人口の40％を占める地域に食品を安価に提供できるため、多くの食品メーカーが拠点を構えている。

　エネルギーの分野は、産出量がテキサス州に次ぐ第2位で、他州へのエネルギー出荷は第1位となっている。シェールガスの北米最大のガス田がペンシルベニア州を覆っており、人口集中地域のすぐ近くに天然ガスが眠っている。シェールオイル・ガスの活用で、プラスチック業界も大きな関心を示しており、フィラデルフィア南部には、輸出拠点の整備を計画している。

　日本への輸出品目は、天然ガス・石油が1位、2位が医療機器、3位が航空機、4位が金属素材と続いている。日本企業は539社が進出しており、2万7966人が雇用されている。

　ペンシルベニア州政府は、ワンストップショップで様々なサポートを行っており、多岐にわたるサービスを投資家に提供している。合弁相手を探すプログラムである、パートナーシッププログラムも用意している。

　グレーターレディング・エコノミックパートナーシップ副理事長のパメラ・シャップ氏は「ペンシルベニア州グレーターレディングのビジネスチャンス」のテーマで講演し、既存工場や工場新設用地など様々な施設を用意していることを報告した。

　モルガン・ルイス＆バッキアス法律事務所の渡邉嗣道氏と村瀬悟氏は「米国・ペンシルベニア州への投資に関する法律環境」のテーマで、対話形式で状況を説明した。

　最後に「ペンシルベニア州に参入した日本企業によるケーススタディー」として、積水化学工業（株）環境・ライフカンパニー 執行役員 シート事業部長 管路更正海外事業部担当の野力優氏が講演した。積水化学工業は、シート事業ではペンシルベニア州ブルームスバーグとミシガン州ホランドに工場を所有している。1963年に米国に進出し、ヘーゼルトンでポリエチレンシートの生産を開始したのが同社とペンシルベニア州との最初の付き合いだが、その工場は数年で撤退。その後、ローム＆ハース社が塩ビシートの工場を建設、その工場をクリアデックスとして分社化したものを、積水化学工業が買収した。同工場は、航空機、鉄道、医療、建築内装向けプラスチックシートを生産しており、従業員は220人。この工場から西へ約3kmの場所に新工場を建設し、セミナー当日の6月1日に生産を開始した。土地面積約23万m²、建屋面積約3万5000m²の既存工場を製本会社から購入。航空機・車輌用内装材向けハイグレードプラスチックの生産を開始した。野力氏は「支援プログラムの提案や、道路使用許可など州政府からすばやく手続きを終わらせてもらった」と語った。