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No.28

米テネシー州、投資セミナー好評裏に終了、知事が積極投資呼びかけ


2016/6/7

ハズラム知事(左)とボイド長官
ハズラム知事(左)とボイド長官
 米国テネシー州政府および日本貿易振興機構(ジェトロ)主催による「米国テネシー州投資セミナー」が5月11日に東京都内で開催された。来日していたビル・ハズラム知事が主催者挨拶を行い、「日本企業の投資への理解に感謝している。州政府として何かしら支援できることがあれば、ぜひおっしゃって欲しい」と語った。

 知事は、テネシー州への日本からの投資は、他の国からの投資を全部あわせても及ばないと説明。特に、日産自動車の工場は北米の中でも歴史があり、生産性の高い工場となっているとした。テネシー州への進出を薦める理由として(1)米国で多くの人が住む場所の中心に位置すること、(2)政府の財政基盤が良いこと、(3)労働力の育成に注力していること、(4)ビジネスの理解が深いことなどを挙げ、「テネシー州で投資した日本企業はコミュニティーの一員となってくれている」と紹介。テネシー州への投資を呼びかけた。

 続いて米国テネシー州経済開発庁長官のランディ・ボイド氏が「テネシー州の魅力」のテーマで基調講演した。

 テネシー州への日本からの進出企業は、セミナーで使用したスライドでは178社となっていたが、「現在では184社に増えている。このセミナーが終わるころには200社になるのでは」と語り場内を沸かせた。テネシー州は北米46の自動車組立工場の中心地となっており、日産自動車、GM、フォルクスワーゲン(VW)が拠点を置いている。テネシー川流域開発公社(TVA)が安定した安価な電力を供給。州内の研究機関の年間研究費は3300億円で、オークリッジ国立研究所をはじめとする多くの研究機関が集積している。オークリッジ国立研究所は米国最大の化学・エネルギーの研究所で年間予算は1800億円。カーボンファイバーの研究では、価格を5ドルまで下げる研究のめどがついたという。また、研究所内には国家運輸研究センターがあり、輸送技術開発のための最先端の装置や機器、コンピューターの提供を行っている。

 人材への投資も活発だ。州知事の重要政策の1つで、2025年までにテネシー州の労働人口の55%に大学や職業訓練校の卒業資格や認定書を取得させる政策である「DRIVE TO 55」を推進。州内の高校を卒業すれば無料でコミュニティーカレッジか応用技術専門大学に進学することができる。また、一般社会人向けに、大学や職業訓練校就業資格取得のため、27の応用技術専門大学で学ぶことができる。さらに、企業が必要とする技術取得のため、州内の大学や職業訓練校はその技術や資格取得の任にあたっている。

 工場建設用の認定サイトは州内に34カ所あり、年内にはさらに10カ所増やす計画。その中の1カ所であるメンフィス地区メガサイトは1659万m²の広さがあり、テネシー州が所有している平地のため、早期の立地が可能。州間高速道路I-40に隣接し、メンフィス国際空港およびFedEx Hubからクルマで45分の場所に位置している。

 ランディ・ボイド長官は「テネシー州はインセンティブでも優位性がある。ぜひとも投資を検討していただきたい」と締めくくった。
 テネシー州では、自動車産業が集積しているという強みがあるが「特に業界は絞っていない。ヘルスケア、物流にも力を入れている」(ハズラム知事)、「航空宇宙、防衛、食品にも注力している。研究センターや本社機能も誘致していきたい。自動車の分野でも研究開発と製造はリンクしたほうが良いのでこの辺も誘致していきたい」(ボイド長官)としている。
 続いて、進出事例として日産自動車(株)生産企画統括本部 生産企画部長の西村文孝氏が「日産自動車のグローバル生産と北米戦略 テネシー州スマーナ工場活動紹介」のテーマで講演した。
 日産自動車は、テネシー州にはスマーナ工場とデカード工場を所有。両工場を合わせた投資額は70億ドル以上で、従業員は9800人以上、土地面積は748万m²、建屋面積は365万m²。2工場のほかに北米本社もテネシー州内に立地している。
 スマーナ工場は、1983年に生産を開始しており、敷地面積358万m²、建屋面積55万m²で、投資額は60億ドル。従業員は8000人以上。生産能力は64万台/年で、累計生産台数は1070万台以上となっている。主にパッセンジャービークルを生産しており、電気自動車(EV)の日産リーフも生産している。

 15年5月には、スマーナ工場に隣接した14万m²以上にサプライヤーパークを整備することを発表。投資額は1億6000万ドルで、1000人以上の新たな雇用を創出。すでに3社が進出している。

 デカード工場はエンジンなどのパワートレインの工場で、97年に生産を開始している。敷地面積400万m²、建屋面積10万m²で、投資額は10億ドル。従業員は関連会社を合わせて2100人以上で、組立生産能力は138万基/年となっている。部品の内製化も進んでおり、機械加工だけでなく鋳造品や鍛造品の生産も行っている。デガート工場では、インフィニティおよびダイムラー向けのエンジン生産工場も稼働している。敷地面積16万m²、建屋面積2.9万m²で、投資額は3億1900万ドル。従業員は500人以上で、生産能力は25.6万基/年。インフィニティおよびメルセデスベンツブランド向けに14種のエンジンを供給しており、インフィニティブランド向けでは、一部栃木工場で車両にエンジンを搭載し、再度米国へ出荷している。

 同社では、現地に対し積極的な貢献を進めており、テネシー州と共同でトレーニングセンターをスマーナに16年末開設予定。工学、ロボット工学、生産維持などの高度生産技術の教育を提供する計画で、日産スマーナ工場と、そのサプライヤーへの即戦力となる人材を育成する。また、工場見学ツアーも実施している。

 西村氏は「人種に関係なく仕事ができる。日本に近い環境で、皆が分け隔てなく仕事ができるのがテネシーの特徴だ」と語った。

 次に新日鉄住金マテリアルズ(株)メタル担体カンパニー マネジメントサポートグループの植村勇介氏が「テネシー州進出について」のテーマで講演。15年6月に設立した現地法人について、設立の背景や進出場所の選定理由などについて説明した。同社では、メタル担体の使用先である触媒メーカーや最終ユーザーである自動車メーカーなどに近い立地場所を候補として、20カ所のレンタル工場を見学し、テネシーかウエストバージニアを選定。労働力、電力、インセンティブ、人柄、環境および州からのサポートでテネシー州に決定した。州内の進出先候補のレンタル工場の選定にあたっても、州政府が積極的にサポートしたという。植村氏は「工場はまだ操業を開始していないが、テネシー州に恩返しができればと考えている」と締めくくった。
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