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石巻赤十字病院、救命救急C北棟が10月供用、本館の改修と機能再編へ


救命24床/血液浄化50床/ICU・CCU 10床/重症管理病棟38床を整備

2015/9/29

北棟概観(手前は石巻市立夜間急患センターの予定地)
北棟概観
(手前は石巻市立夜間急患センターの予定地)
 日本赤十字社 石巻赤十字病院(宮城県石巻市蛇田字西道下71、Tel.0225-21-7220、金田巖院長)は、救急医療や重症治療、災害時対応の機能を拡充・強化した北棟が竣工し、災害医療研修センターとともに10月1日から本格稼働する。北棟は地上4階建て延べ約1.5万m²で、救命救急センター(24床)と血液浄化センター(50床)を増床し、集中治療室(ICU・CCU、10床)を新設、全室個室の重症管理病棟(38床)の新規導入など、高度・救急医療と災害時も切れ目なく運営できる体制を整えた。県北東地域の石巻・登米・気仙沼医療圏における3次救急医療を担う中核病院に期待が寄せられる。

 石巻赤十字病院は、1926(大正15)年に開設され、2006年5月に現在地の石巻市蛇田地区に移転新築した。病床数は464床(一般426床、ICU 10床、救命救急センター24床、感染4床)、診療科目28科で運営している。職員は医師140人、看護師530人、事務職ほかの合計1109人となり、移転前より職員数が倍増した。急性期患者の新規入院数は月間約1100人で、津波被害で全壊し解体された旧石巻市立病院の影響もあり、震災前から170人ほど増加している。11年3月の東日本大震災では沿岸部の基幹病院が機能停止したなか、三陸沿岸部の被災者と多くの患者を受け入れて災害時医療の重要な役割を果たしたことは記憶に新しい。

 同病院では震災前の増築計画を見直し、災害対応の経験を活かし、新たに北棟と災害医療研修センターの計画を策定、重症度の高い患者に切れ目のない医療の提供体制の確立を目指した。北棟は、S造り免震構造地上4階塔屋1階建て延べ約1万4890m²。工期は13年10月~15年7月31日。設計は日建設計、施工は鹿島建設が担当した。総事業費は約110億円で、このうち地域医療再生基金52億円、海外救援金23億円(100カ国の赤十字社・赤新月社およびクウェート政府)、自己資金35億円を充てた。

北棟2階のICU・CCU(集中治療室)エリア
北棟2階のICU・CCU(集中治療室)エリア
 北棟の主な機能は東日本大震災後の県北東部の高度医療を担う医療提供体制の構築を図るため、救急医療対応、重症者治療体制を整備した。具体的には救命救急センターをこれまでの10床から24床に増床、機能を拡充した。これまでの本館のHCU 6床を廃止し、ICU・CCUの許可病床10床を新設して、当面は6床の稼働からスタートする。また、全室個室の重症管理病棟を新設して38床を導入。化学療法センターは15床から20床に増床。血液浄化(透析)センターは37床から50床へ増床する。さらに十分なスペースを確保した医局や、健診センターの機能拡充、屋上ヘリポートの設置、災害時に対応した地上ヘリポートの整備も計画している。

 各フロアの構成は、北棟の1階に重要機能である救命救急センターを施設の北側に配置した。これは地上へリポートや国道、高速道路ICに近いため。救急車両の屋内待機スペースを設け、24床の内訳は、個室8室と4床室2室、オープンスペースの8床で、うち感染症病室が1室。また、近隣に東北電力女川原子力発電所が立地していることから、同施設の作業員が被ばく、負傷したことを想定したNBC室を導入、シャワーによる除染や身体洗浄、さらに排水処理の設備も完備している。

 独自に来院する外来救急患者に対しては、診察室8室を設けるとともにトリアージ室を設置して看護師が問診して緊急性を判断する。また、同センター内には手術室1室を設け、交通外傷など緊急的な処置が必要な患者に対応する。

 さらに検査・治療のためのCT室、X線室、血管造影機器を備えたIVR室2室、心臓カテーテル室、心エコー室3室などが配置されている。このほか観察室や家族などの控室、地域住民の疾病を予防する目的の健診センターはスペースを拡充して整備した。

 2階は術後の重症患者や重症心疾患に対応する集中治療室のICU・CCU(看護師1人に対して患者2人)を10床体制で新設した。従来は本館3階にHCU 6床(看護師1人に対して患者4人)を設置していたが、これを廃止して北棟に許可病床10床を設けた。ただ現状は看護師が21人体制で運用するため当面は6床の稼働となる。ICU・CCUの本格稼働にはさらに20人の看護師が必要で、病院全体では570~600人体制が求められる。

 腫瘍内科・化学療法センターは、地域ニーズに応えるため5床を増床して20床体制とした。受診患者は本館で受け付け、検査後に新センターで診察と治療が同一エリアで行われる。このため患者の容態が急変した時には担当医がすぐに対応でき、安心感が大きいという。

 血液浄化センターは、37床から50床へ、うち個室2室に増床した。東日本大震災の発災時も透析センターの運用が維持されたが、今回の移設・増床後も継続して1日あたり午前と午後で100人の透析患者に対応する。

 3階は、施設西側に重症患者の一般病棟を配置した。個室38室、38床を設け、スタッフステーションに面する10病室は壁をガラス間仕切りとして、特に重症な患者を観察しやすいレイアウトとした。そのほかの扉タイプの個室はトイレ付きでプライバシーに配慮した病室となる。また感染症病室は空気が外部に漏れない陰圧の1室を配置した。なお、本館には法定感染症の4床を設置している。このほか3階の東側には医局と診療支援事務課を配置した。

 屋上階には機械室を設け、最上部に緊急ヘリポートを設置した。ヘリコプターの着陸面から同一レベルで専用エレベーターまで結ばれ、各階へ救急患者を搬入する経路を確保した。また、災害発生時の停電により、エレベーターが使用不能となることも考慮して北棟の北側に地上ヘリポートを16年春から整備し、同年夏の完成を予定している。現在のヘリポートの利用状況は、平常時で月間に数回程度といわれており、地上ヘリポートは通常時、職員駐車場として利用する考えである。

 ◆北館の稼働後に本館の機能再編
 今回の北棟の竣工および本格稼働で、今後は本館の病棟および各部門の機能再編を実施する。移転後の化学療法センター跡は仮設南棟にあったリハビリ部門を移設。健診センター跡は生理検査部門を導入する。また仮設南棟の50床は、本館の病棟を機能別に再編し移転する計画である。10月以降に本館の改修工事を実施して16年夏の完成を予定している。

 一方、石巻市は14年3月に石巻赤十字病院と市立夜間急患センターの再建へ向けて基本協定を締結した。本館と北棟の間の敷地に同センターを建設するもので、1次救急医療の内科・外科・小児科を標榜し、16年秋の運用開始を予定している。これにより石巻赤十字病院は救命救急センターと重症患者治療を、石巻市立病院は2次救急医療と回復期医療を担い、両者は役割分担、機能連携を強化する方針である。
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