医療産業情報
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

新潟科学技術学園理事長 寺田弘氏「地域に密着し、新潟から情報発信」を


保健医療科学発展の準備で“医工医薬連携”に参画呼びかけ、新キャンパスは16年春開校

2015/9/8

寺田弘氏
寺田弘氏
 新潟科学技術学園(新潟市秋葉区東島265-1、Tel.0250-25-5111)は、新津駅前キャンパスの準備、新潟地域の4大学との連携、聖マリアンナ会との包括提携、さらには産学連携プロジェクト推進に取り組んでいる。同法人の理事長で、新潟薬科大学の学長を務める寺田弘氏に話を伺った。

 ――まずはご経歴から。
 寺田 京都大学医学部薬学科から大学院で博士課程修了ののち、37年間にわたり徳島大学の薬学部において教鞭と研究に携わり、15年前に日本薬学会会頭も務めた。徳島大学の教授を退官後、東京理科大学のDDS研究センター長を経て、2013年から現在のポストに就任し、「地域に密着し、サイエンスを発展させ、新潟から情報発信しよう」のスローガンのもと、法人の発展と地域活性化の核となるよう取り組んでいる。

 ――大学について。
 寺田 薬学部と応用生命科学部というライフサイエンスを志向する2学部を擁し、1学部の定員は180人。最先端の研究設備を備え、実学教育と高い専門教育を追求し、就職や大学院進学にも強い。さらに、充実した教育・研究体制を整備するため、15年に新設した応用生命科学部生命産業創造学科を16年春から新津駅東口に移転する。

 ――地域への貢献では。
 寺田 私は、地方が活性化することが日本を元気にすることであると考えている。新潟薬科大学産官学連携推進センターなどでは、社会のニーズと大学のシーズを結びつけ、広く地域医療や地域産業界に貢献している。新潟日報メディアシップに長岡造形大学、新潟青陵大学、新潟青陵大学短期大学部との包括連携協定に基づき、4大学合同の「メディアキャンパス」を開設し、教育連携事業や地域課題解決のための事業連携を積極的に取り組んでいる。
 また、最近開設した「薬草・薬樹交流園」を地域社会に広く公開している。

 ――日本の医薬品業界について。
 寺田 武田製薬は1.8兆円、大塚ホールディングスは1.4兆円、アステラス製薬は1.3兆円程度で、世界の大手医薬品企業と比べ売り上げ規模では見劣りがするものの、創薬の開発力は米国、フランス、スイス、スウェーデン、ドイツなどと並び日本も高いものを持つ。
 また、医薬品においても「凝りすぎ」ており、「そこまで立派でなくても」と思われるほど万全を期すため、海外製品に負けることがあるが、ただ、日本製医薬品の品質の高さは世界が認めるところだ。
 日本の薬を東南アジアに広めたいと赴いたとき、錠剤のサイズ、高い効能で評判となり、温度管理が重要な輸液も人気があると気づいた。ベトナム、スリランカ、ドバイの各国トップが、日本の医薬品は高価であるにもかかわらず、「是非とも、我が国で日本の医薬品を使わせて欲しい。認可は即座に下ろすことが可能だ」と直訴を受けた。初期投資が大きいことから今はストップしているが、日本製医薬品の潜在需要の大きさを物語っている。
 また、日本の薬剤師の権限は世界的に見て特殊である。本来、薬剤師は医師が処方した薬が妥当であるかを公正にチェックする役割を果たさなければならない。その点では医師と薬剤師は対等な関係にないといけないが、日本では医院の門前に医院と一定の了解を得た形で薬局が開設されている場合が多いので、処方された薬が適切かを公正にチェックできるかどうか。また、薬局は企業が開設して、薬剤師を雇用している場合が多いので、薬剤師の職能の独立性がきちんと護られているか。さらに大きな問題は、日本では医師も調剤することを認めていることである。日本の医療のためにも、この制度を改めることが必要だ。

 ――DDSが専攻ですね。
 寺田 話題のBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)も、いかにホウ素をがん細胞だけに高い選択性を持って移行させるかが治療成功のカギである。「医工連携」がいわれて久しいが、医工に医薬を加えた「医工医薬連携」が重要となっている。
 新潟薬科大学は、一般財団法人 聖マリアンナ会と包括連携に関する協定をこの3月に締結しており、先方の理事長である赤尾保志氏およびプロジェクト参画企業とで、保健医療科学の発展のために「何かしよう」と意気投合し、創薬開発など様々な事業プランを具体化しつつある。広く賛同する企業、仲間を増やしていきたいと思っている。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/編集長 倉知良次)

サイト内検索