電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第135回

フラワー・ロボティクス(株) 代表取締役社長 松井龍哉氏


家庭用ロボを16年下期販売へ
ロボットを「日常風景」に

2015/8/28

フラワー・ロボティクス(株) 代表取締役社長 松井龍哉氏
 フラワー・ロボティクス(株)(東京都港区赤坂9-5-12、Tel.03-5545-1655)は、家庭用ロボット「Patin(パタン)」の開発を進めるベンチャー。機能を追加・拡張できるプラットフォーム型ロボットを標榜し、2016年下期の販売を目指している。代表取締役社長の松井龍哉氏に話を伺った。

―― ご略歴から。
 松井 もともと私は建築家の丹下健三氏に師事し、都市や建築の設計に携わっていた。そのなかで「実空間」とインターネットなどの「ネットワーク」の空間が結びつく世界が広がる可能性に着目し、そのインターフェースとしてロボットの活用が面白いのではないかと感じていた。
 そんななか、縁あって科学技術振興事業団のERATO北野共生システムプロジェクトに参加することになり、サイエンスとデザインの関係を研究するなか、その1つとしてヒューマノイドロボットのデザインにも携わった。そしてそこでのノウハウを活かし、01年に創業したのが当社フラワー・ロボティクスである。

―― 製品について。
 松井 創業当初はいくつかの企業などから開発依頼を受け、ロボットを制作していた。また、自社ブランドの開発にも取り組み、自社で開発と販売を企画し、人工知能を搭載したマネキン型ロボットを開発。これはロボットが色々なポーズを自律的に試行し、その際のお客さんの反応を計測し、どのポーズの時に一番反応があったかをデータ収集し、環境に応じたポージングをするロボットである。
 そういった取り組みを進めるなか、近年のスマートフォン市場の拡大などにより、ネットワーク環境が急速に整備され、私が当初思い描いていた「実空間とネットワークを結ぶロボット」を実現できる環境ができつつあると感じた。そこで経営資源を産業用ヒューマノイドロボットから家庭用ロボットへ移し、14年に開発着手したのがPatinである。

―― そのPatinについて。
家庭用ロボット「Patin」(写真提供:フラワー・ロボティクス)
家庭用ロボット「Patin」
(写真提供:フラワー・ロボティクス)
 松井 人工知能を搭載し自律移動できる家庭用ロボットで、本体のほか、本体への充電機能やクラウドとの通信機能を持つ「ピット」、そして本体上部に取り付ける各種「サービスユニット」で構成される。このPatinはプラットフォーム型ロボットを標榜しており、その特徴として、サービスユニットを付け替えることで、様々な機能を追加・拡張することが可能な点が挙げられる。

―― サービスユニットについて。
 松井 すでに開発済みのサービスユニットとしては、照明器具や植栽(プランター)などがあり、例えば、照明の場合、利用者の生活習慣や嗜好をPatinが学習し、照明のオンオフや調光を自動的に行ってくれる。また、Patinを家庭用ロボットのプラットフォームとして広めていくため、サービスユニットの開発はSDK(開発用キット)を公開して、様々な企業・団体の方が参入できるようにする予定である。
 つまり、自律移動や人工知能など、ロボット開発について一から設計することなく、サービスユニットのアイデアがあればPatinのシステムを活用して新しい家庭用ロボットを作ることができる。現在までに国内外から多くの関心をいただいており、様々なサービスユニットが候補として挙がっている。Patinの一般発売は16年下期を予定している。

―― Patinの電子デバイスや機能について。
 松井 プロトタイプ機には自律移動や人・障害物を検知するための各種電子デバイス(表)を使用しており、上部には最大約4kgのものを載せることができる。また、連携するクラウドには集約した行動情報などを蓄積でき、機能更新のための情報発信などのほか、利用者はウェブからPatinが蓄積した情報を閲覧することもできる。

―― 今後の抱負を。
 松井 当社は創業当初から「ロボットが日常風景になる」ことを最大の目標として事業を展開している。例えば10年前にスマートフォンはなかったが、現在はあらゆるところで目にすることができる。このようにロボットも我々の生活に当たり前のように存在する「風景」にしていきたい。
 しかし、それは当社一社では実現できず、新しい産業を作りたいという思いを持つ方が多く集まる必要がある。従来ロボット関連分野に取り組んでおられる方はもちろんのこと、ロボットのノウハウがない方でもPatinのサービスユニットの開発などで関わりを持っていただき、ロボットを新しい産業としてともに作り上げていければと思う。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年8月27日号9面 掲載)

サイト内検索