三井住友ファイナンス&リース(株)(三井住友F&L、ヘルスケア部門=東京都千代田区一ツ橋2-1-1、Tel.03-3515-1837)は、設備投資において財務ソリューションからモノ・商流に至るまで、優れた知見を併せ持つ総合リースのリーディングカンパニーだ。医療・介護関連では35年の歴史を持つ専門部署を有し、最新の医療機器から介護機器に至るまで、病院やクリニック、介護事業者の経営改善につながるリース・ファイナンスサービスを提供している。執行役員特定分野ビジネス部門(ヘルスケア他)の西河哲也氏に事業の概況や今後の成長戦略を伺った。
―― 医療機器におけるリース市場について。
西河 当社の推計によると、リースに適格な医療機器類の国内市場は9000億~1兆円規模だ。一方で、医療機器関連のリース取扱額は2013年度で約3022億円(公益社団法人リース事業協会調べ)とされており、リース利用率は約30%と試算される。
民間設備投資全体に占めるリース利用率が約7%であるのと比較すると、医療機器分野では極めて高い利用率であり、リースを広く活用いただいている点が他の産業分野と大きく異なっている。
―― 病院などがリースを活用するメリットは。
西河 まず挙げられるのが、資金調達の1つの手段となることだ。初期負担を抑えて高額な医療機器を導入でき、一方で銀行借入枠を温存することが可能だ(担保提供も不要)。
またリースでは、事業収入である診療報酬に応じた、フラットなリース料の支払いとなる。一定基準を満たす場合には、これらの支払いリース料は全額損金処理することもできる。さらに、毎月のリース料が明確であるため、院内で部門別のコストが把握しやすいなどのメリットもある。
―― 昨今のリース活用状況や今後の展望について。
西河 13年度は、14年4月からの消費税増税などもあり、仕入控除できない病院などから駆け込み需要があった。
14年度はその反動に加え、仕入の税負担増を診療報酬の改定(14年4月)では補えていないこと、また、病床機能の方向転換を迫る政策などにより、投資は抑制基調で推移した。
これは、政府が医療費削減、特に「2025年問題」(団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる年)に向けて、医療行政の転換を図っていることを背景としており、人口減少要因も加えると今後、日本の医療機器に対する設備投資市場はほぼ横ばいでの推移にとどまるとみられる。
―― そうした状況のなか、貴社の事業戦略は。
西河 当社では“これまでにないリース活用需要の創出”に取り組んでいく。病院(20床以上)向けでは、多様なニーズに対応するため、幅広いリースを提案していく。例えば、使用量に応じてリース料をお支払いいただく「歩合リース」。医療機器メーカーとの連携により保守を含めた「メンテナンスリース」。また、医療機器の中古価値を見込んだ「オペレーティングリース」も提案可能だ。
当社では14年7月、シップヘルスケアグループと中古医療機器売買を目的とした合弁会社を設立した。リース会社とコンサルティングに強みを持つ医療機器商社が、互いの強みを活かして中古医療機器市場に進出する業界初のケースだ。
一方で、クリニック(19床以下)向けサービスの拡大にも注力していく。クリニック開業には融資とリースをセットにした総合的な資金提供に加え、事業計画のサポート、最新のデータを活用した診療圏調査など、トータルサポートを提案していく。
―― 海外展開の進捗・展望は。
西河 1年ほど前から中国・北京市に専門チームを設置し、医療機器リース事業の本格展開をスタートさせている。順調に事業を拡大しており、今後の成長が楽しみだ。
当社は、アジアを中心に8カ国・12拠点でサービスを提供している。今後成長が見込める市場を見極め、医療ビジネスをさらに拡大させていく。
―― 改めて、医療機器関連事業の将来展望を。
西河 日本再興戦略が進められるなか、未病産業や地域産業と連携した健康産業の創出や地域包括ケアシステムの充実など、様々な角度から健康・医療戦略が考案されている。総合リース会社である強み・特性を活かし、それらの取り組みを支援していきたい。
(聞き手・本紙編集部)