■ADASの時代にはカメラは自動車の眼となる
車載カメラの次のトレンドはAdvanced Driver Assistance Systems(ADAS)によって新たな局面へと動き出した。
視界補助カメラは、自動車の後退の際、人間の後方視界を補助するために搭載される。しかし、画像認識カメラはADASの眼の働きをし、走行中に刻々と変化する様々な情報を捉えることを目的に開発されている。そして、その先には自動運転の要としての役割が期待されている。
2014年の画像認識カメラ市場は前年比35・9%増の613万台となる見通しだ。市場は視界補助カメラに比べて小さいが、今後も年平均成長率31・3%という高い伸びで成長し、16年には1000万個を突破、20年には3000万個の市場へと成長するだろう。
画像認識カメラ市場の特徴は、豊富なカメラの種類である。走行状況のチェックに始まり、ライトのコントロールや車内のモニタリングなど、用途は多岐にわたっている。画像認識カメラの種類を整理し、それぞれの普及の様子を予測した(図1)。
図1 画像認識カメラ普及率予測
現在はどの画像認識カメラの普及率も低いが、20年までにはHigh Beam Controlの普及率は10%を超え、Lane Departure Warningの普及率は10%に近づくと予想されている。
ただし、これでも視界補助カメラの普及と比べると低いと言わざるを得ない。これは、画像認識カメラシステムは高額なオプションであり、高級車から普及が始まるためだ。他の画像認識カメラの普及率の予想は、20年時点で5%以下である。
これを確認するために、画像認識カメラのグレード別搭載傾向を見た(図2)。高級車種であるスーパープレミアムとプレミアム車の合計は、全画像認識カメラシステム中の約33%のシェアを占めた。また、中級、普及車種の普及グレードでは最多の62%を占めた。日本特有の軽自動車では、全画像認識カメラシステム中の5%のシェアを占めた。高級車種への搭載は視界補助カメラの22%を12%上回るシェアとなり、普及車種、軽自動車への搭載は視界補助カメラのシェアから減少しており、画像認識カメラの高級車指向が顕著に示される結果となった。
図2 画像認識カメラシステムのブランド別比率
■車載カメラ用イメージセンサーのマーケットシェア(視界補助カメラvs画像認識カメラ)
車載カメラを支えるキーデバイスの筆頭はイメージセンサーである。イメージセンサーはカメラに1対1の割合で搭載される。これは、視界補助カメラでも画像認識カメラでも変わらない。車載カメラは価格や市場性の点で有望な市場となることが期待され、スマートフォンを主軸にビジネスを展開してきたイメージセンサーメーカーが戦略の立て直しに奔走する。
13年の視界補助カメラ用イメージセンサーメーカーの出荷シェア(図3)で1位となったのはOmnivisionで、出荷個数716万個でシェア36%となった。2位はAptinaで、出荷個数577万個でシェア29%となった。両社ともにSoC(System on Chip)対応しており、今後とも車載カメライメージセンサー分野でシェアを分け合うだろう。3位はソニーで、出荷個数477万個でシェア24%となった。これまでソニーの主力製品はCCDであったが、このままではCCDからCMOSへの流れの中でビジネスが弱体化する恐れが高まっており、同社も車載カメラ分野のテコ入れに乗り出した。
図3 視界補助カメラ用CISの市場シェア
一方で、13年の画像認識カメラ用イメージセンサーメーカーの出荷シェア(図4)で1位となったのはOmnivisionで、出荷個数225万個でシェアは50%となった。2位はAptinaで、出荷個数180万個でシェアは40%となった。両社のシェア合計は90%に達しており、事実上、2社で市場を分かち合っていると言っても差し支えない。かつては、この分野への参入の速いAptinaが1位であったが、事業戦略で勢いのあるOmnivisionが順位をひっくり返して首位となった。
図4 画像認識カメラ用CIS市場シェア
車載カメラの大きな開発要素技術の柱は依然として「低照度対応」「低ノイズ化」「光利用効率拡大」の3つである。AptinaとOmnivisionはSoCの低価格製品で他社と差別化を図っている。今後は他社でも同様のタイプの開発が進められるだろう。
Omnivisionは、14年に車載用イメージセンサーとして初めて裏面照射(BSI)CMOSイメージセンサーを用いたダイナミックレンジ120dBの製品を市場に投入した。今後は他社もこうした傾向に追従し、BSIやダイナミックレンジの広いイメージセンサーの開発が盛んになると予想される。
IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、
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