商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第401回

双日商業開発(株) 代表取締役社長 柏木広喜氏


運営施設が前年度超えを達成
DXマーケティングなど強化

2023/10/10

双日商業開発(株) 代表取締役社長 柏木広喜氏
 双日商業開発(株)は、双日グループが開発した「モラージュ」シリーズの「柏」「佐賀」「菖蒲」のほか、「ニットーモール熊谷」「サンストリート浜北」「那須ガーデンアウトレット」「オリナス錦糸町」「ピエリ守山」の計8施設を運営する。今後の取り組みを同社代表取締役社長の柏木広喜氏に聞いた。

―― 足元の状況は。
 柏木 直近8月の売上高は、2022年度比でほぼ全施設が100%を超えた。

―― 主な施設の状況は。唯一都心立地のオリナス錦糸町から。
 柏木 都心立地でありながら駐車台数が多く、例えばテナントに大型雑貨テナントがあるが、車で来店され商品を持って帰られるなど、郊外型に似た使われ方が見られる。一方で近隣に観光資源が多いことから、車でお越しのお客様がオリナス錦糸町で駐車し、そのまま浅草や両国の観光スポットを巡るパーク&ライドを検討している。

―― ピエリ守山は。
 柏木 一時テナント数が4店に落ち込み、“明るい廃墟”と揶揄されたころと比べて劇的に変わった。当社8施設の中でも好調だ。こうした実績からリーシングやバリューアップ手法の経緯について話を聞きたいという要望も多い。

―― ピエリ守山はどう改善したのですか。
 柏木 我々が取得する前は賃料獲得のためのリーシングで、MDがちぐはぐになっていた。リーシングを含めて商業施設としてお客様が望むことを実施するに尽きる。守山市との地域連携もあり、当社が取得してから、別棟で琵琶湖を一望できる温浴施設を新設し、これも効果があった。

―― モラージュ菖蒲は。
 柏木 開業して15年が経つが、直近の売り上げ、またオーナーが求めるNOIは右肩上がりで推移しており、さらにもう1歩、2歩上がっていくために常に手を加えてきた。最近では敷地に住宅展示場を誘致できたことに続き、新たな別棟形態での出店テナント誘致を数件検討している。

―― 那須ガーデンアウトレットについて。
 柏木 GW明けにコロナが5類に指定されてから好調だ。他の施設と比べて観光地色の強いアウトレットで、那須という環境の中でショッピングや滞在を満喫していただく。それに付随して商品構成を考える。店舗数は120店を擁し、スポーツ系ではゴルフショップが9店あり、売れ行きが好調だ。キッチン雑貨やペット関係も人気が高く、加えて地元の食材や特産物を扱う店舗も多い。日常的に利用されるお客様も多く、6~7割のお客様が栃木県を中心に福島県からも来ていただいている。このためアウトレット+日常SCの混在のようなケースが出てきている。

―― 今後の展開は。
 柏木 インバウンドの誘客を強化する。観光庁の補助金事業提案に当社が採択された。那須エリアは台湾からのお客様が多いため、台湾のメディアと組んで当社の施設を回るモニター向けのツアーを企画している。10月から始める予定だ。

―― 増床は。
 柏木 取得当初、増床を視野に入れていたが、コロナで計画をいったん止めて、コロナ前に売り上げを戻すことにリソースを集中している。

―― 今後の取り組みやテーマは。
 柏木 DXを活用したマーケティング・販促施策を強化する。さらに金融ストラクチャを用いた施設の保有・運営などを検討中だ。
 当社は、規模の大きい施設で現地にスタッフを常駐し、運営する常駐型を得意とする。一般的に小規模な施設やロードサイド型は、固定賃料での契約が多く、我々がお手伝いできることが限られている。それならば、例えば施設を保有するSPCの管理も担いながら、施設を運営するといったところで新たな事業の幅が広がることから、巡回型にも参画できる。

―― より都心の展開は。
 柏木 引き合いをいただいている。都心部の路面店などで、ラグジュアリーブランドのリーシングやPMはできないのかというご相談をいただいている。新たなチャレンジとして検討する価値がある。

―― 最後に一言を。
 柏木 予断を許さないが、ようやくコロナ後の新たな市場が見えてきた。お客様の買い物に対する考え方や生活に対する考え方が様変わりした。こうしたことを踏まえ、次の需要を見越した施設の運営を考えなければいけない。お客様が何を望んでいるか、何を求めて当社施設に来ているのか、そこのマーケティングを徹底したい。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2515号(2023年10月3日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.419

サイト内検索